子どもの食について記した、本東大医学部付属病院小児科医の伊藤明子(みつこ)先生の著書「医師が教える子どもの食事50の基本」から、別のコラムで「10の超基本」をご紹介しましたが、さらに「8つの基本」についてご紹介します。
毎食、たんぱく質を2種類食べる
動物性と植物性を合わせると効率よくたんぱく質を摂取できる。
- 植物性(豆腐、納豆など)に含まれるたんぱく質は約7~15%なのに対して、動物性(肉、魚、卵など)に含まれるたんぱく質は約25~30%。
- 動物性たんぱく質には血液を作ったり、脳機能を維持したりする働きがあるビタミンB群が含まれる。
- たんぱく質は体内に蓄積できないので毎食摂る。毎食手のひら1杯分のたんぱく質食材(100g程度)を摂るのが理想。
ギリシャヨーグルトを朝食に食べる
時間のない朝でもたんぱく質が摂れる。
- ギリシャヨーグルトは脂肪ゼロで高たんぱく。酸味が少ないので無糖でも食べやすい。
- 一般のヨーグルトの脂肪は飽和脂肪酸なので、体内で炎症を起こす摂りたくない脂。
- 高プロテインシリアルなどと混ぜて食べると、より高たんぱくになる。朝食にたんぱく質をたっぷり摂っていれば、満腹ホルモン(レプチン)がより分泌されるので、無駄な間食を減らすことができる。
- 小学生は110g程度の量が目安。
たんぱく質を補いたいときは、プロテインパウダーを摂る
たんぱく質を効率よく摂れる。
- 子どもにも安心安全な、無添加でアレルゲンフリーのプロテインパウダーを選ぶ。
- 水などに溶かしたり、みそ汁に大さじ1杯ほど入れて飲むとよい。
- 高野豆腐パウダーやおからパウダーも高たんぱく。高野豆腐パウダーはたんぱく質でありながら、消化されずに腸に届き食物繊維のような機能を持つ「難消化性たんぱく」として腸で働く優れもの。
亜鉛の補充を意識する
亜鉛が一番豊富に含まれるのは牡蠣。好きな調理法で。いわし、うなぎ、海藻、枝豆、すりゴマにも豊富に含まれる。亜鉛を補う薬やサプリメントもある。
- 亜鉛は子供でも不足、欠乏がよく見られる。(約13%の子ども)
- 亜鉛欠乏は皮膚炎、口内炎、脱毛につながる。
- 亜鉛欠乏で免疫力が低下するため、感染症にかかりやすくなる。また、成長障害も起きやすくなる。
- 亜鉛不足はうつ、不安感にも関連がある。
魚を食べるなら、青魚を第一候補に
オメガ3を豊富に摂れる。
- 青魚(いわし、あじ、サバ、さんまなど)にはDHA(ドコサヘキサエン酸)EPA(エイコサペンタエン酸)が豊富に含まれている。青魚に含まれる脂肪酸は必須脂肪酸の多価不飽和脂肪酸といい、摂らないと健康を保てない脂。DHAとEPAはこの多価不飽和脂肪酸の中のオメガ3に分類されている。
- EPAとDHAは体の炎症を抑えたり皮膚を保湿したり、動脈硬化を予防したりする。
- EPAとDHAは脳の神経を保護する作用があり、これらの値が低いと、不安感が強くなったり、集中力が低下して落ち着きがなくなるなどの研究結果が報告されている。
- 乳幼児期に魚を多く食べていた子のほうがIQが高いという研究報告がある。
- EPAとDHAは脂なので、温度が高く、時間がたてばたつほど酸化して悪いものになっていく。できるだけ新鮮な魚を調理したての状態で食べるのが良い。刺身で食べることも体に良い。
- ADHD(注意欠陥多動性障害)の子どもはEPA、DHAの数値が低い傾向にある。液体やカプセルなどでオメガ3を補充することで、症状が緩和されたという研究が複数ある。
アマニ油、えごま油を小さじ1杯
体の炎症を抑えるアルファリノレン酸という必須脂肪酸を含む植物性のオメガ3系オイル。魚が苦手な子どもにおすすめ。
- 心臓、血管、神経への健康効果が期待できる。
- 1日に小さじ1杯が目安。摂り過ぎに注意。
- 加熱しないで、そのままの状態で摂る。
- みそ汁、スープ、和え物などに加えたり、サラダにかける。
出汁は粉末でOK
味覚が育って、たんぱく質も摂れる。
- 煮干し出汁、いりこ出汁、あご出汁、ホタテ出汁などの出汁にはうま味成分であるアミノ酸が豊富に含まれている。以下の出汁の三大うま味成分を組み合わせて使うことで、うま味成分が倍増する。
- グルタミン酸(昆布出汁に豊富に含まれる)
- イノシン酸(かつお出汁に豊富に含まれる)
- グアニル酸(きのこに豊富に含まれる)
- 出汁は味覚、嗅覚の形成に良い。
- 粉末状の出汁を使えば簡単調理が可能。汁物以外にも使いやすい。出汁パックのタイプでもOK。
- 出汁を上手に使うと減塩にもなる(2割減塩でも美味しく食べられる)。
シリアルは大麦、小麦ブラン、オートミールのどれかを選ぶ
食物繊維で腸活する。
- 日本人はほぼすべての世代・年齢層で、食物繊維が不足している。大麦、小麦ブラン、オートミールは食物繊維が豊富。
- 朝食のシリアルを「大麦」「小麦ブラン」「オートミール」のどれかに変更するか、いつものシリアルに加えるだけで効果が期待できる。オーツミルク、アーモンドミルクをかけるのがおすすめ。
- 食物繊維は善玉菌のエサになるとともに、免疫・脳に重要な役割を果たすので、子どもの時から摂取する習慣がつくと一生の健康につながる。
食物繊維は脳にとっても大切
神経と血液を介して、腸内細菌の代謝物(作るもの、分泌するもの)が脳に運ばれ、それが脳の働きを左右している。腸内環境が乱れると、情緒や気分が乱れるのはこのため。これを腸脳相関という。