食と健康

発達障がいと「ミネラル」

ミネラルが不足するとどうなる?

発達しょうがい、グレーゾーンのお子さんには十分なミネラル補給を考える

ミネラルとは

ミネラルは、生体を構成する主な4元素(酸素、炭素、水素、窒素)以外の元素のことで、無機質ともいう。
人間の体には「必須ミネラル」と呼ばれる16種類のミネラルが必要とされており、1日の必要量に応じて「多量ミネラル(7種類)」と「微量ミネラル(9種類)」に分けられる。

  • 多量ミネラル / カルシウム、リン、カリウム、硫黄、塩素、ナトリウム、マグネシウム
  • 微量ミネラル / 鉄、亜鉛、銅、マンガン、クロム、ヨウ素、セレン、モリブデン、コバルト

以下に、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛について解説します。

① カルシウムが不足すると

人体は100種類以上の元素でできている

カルシウムが不足すると骨や歯が弱くなる。幼児では骨の発育障害が起こり、成長が悪くなる。また、カルシウムが不足するとイライラしやすくなる。カルシウム不足が解消されると、心が穏やかになり、以前より性格がやさしくなる。

人体は100種以上の元素でできている。酸素、炭素、水素、窒素が重量の96%以上を占め、この次に多いのがカルシウム。
国の「国民健康・栄養調査」(令和元年)で、カルシウムとマグネシウムは男女年代を問わず1日摂取量が「推定平均必要量」を下回っているので、カル・マグ不足による不調や病気を抱えている国民が半数以上いることになる。市販食品をよく食べる人はカル・マグの摂取量が推定平均必要量よりはるかに少ないという大問題がある。

日本人は昔から、煮干し、昆布、豆腐を入れたみそ汁と、小魚や貝類でカル・マグを摂取してきた。みそ汁も小魚も豆腐も飲食の量が減ったのでカル・マグ不足になっている。

カルシウムを補うときは、ココアミルク、カフェオレ

カルシウムを簡単にたくさんとれるのが、宅配ピザと牛乳。ただし、牛乳はマグネシウムが少ないという欠陥がある。牛乳を飲むと、カルシウムがマグネシウムを奪い、マグネシウム不足の人は、不足がさらに進んで症状が悪化する。
牛乳はそのまま飲むと、マグネシウム不足が深刻化するので、マグネシウムを多く含むココアやコーヒーを入れるのがいい。ココアミルクかカフェオレにし、カル・マグ比を2:1か1:1に近づけて飲んでいただきたい。
他にも、小魚、大豆製品、海藻などに多く含まれる。

ミネラルが酵素の化学反応を高める

人体の中では数千種類の化学反応が日夜、調和を保って同時進行し、それを数千種類の酵素が制御している。酵素はたんぱく質で、その構造にミネラルを取り込んで、生化学反応の効率を高める酵素が1000種類以上ある。ミネラルを1つ取り込んで、1000倍ぐらい効率を高めたところに、ミネラルを取り込んだ別の酵素が関わると効率が100万倍になる。3つ目、4つ目と別の酵素が関わると、最大100億倍の高率に高まることもある。
だから瞬時にいろいろなことに対応できる。しかし、ミネラルが足りないと、体と脳の機能が低下して、声は聞こえていても、内容を理解できない、などということが起きる。

②マグネシウムが不足すると

「苦い」ので嫌われた

マグネシウムが不足すると、記憶や理解力、思考力が低下して、イライラする。低体温で冷え性になり、食欲がなく、眠気が出たり、寝つきが悪く、何度も目覚め、早く目が覚めたり、便秘になり、そこから、不安、うつ、幻覚、錯乱などに症状が進行することもある。
だるい、ムズムズする、チクチクするなどの神経症状や、しびれ、ふるえなどの筋肉けいれん、こむらがえりなどの筋肉収縮、多動の症状などが起こる。不整脈、虚血性心疾患、狭心症、心筋梗塞などの心疾患や、高血圧、脳梗塞、糖尿病、骨粗しょう症などの病気の原因にもなる

マグネシウムはエネルギー、神経伝達物質、ホルモンの産生や、タンパク質代謝などに関わる300以上の酵素に入って、生体の化学反応をけた違いに促進している。だから、不足すると心と体にいろいろな異常が出て、ひどい不足が続くと脳が小さくなる。
こんなに重要なミネラルなのに、食品から抜かれるようになっている。

マグネシウムを多く含む食品

マグネシウムは、精製する前のコメ、小麦、大麦、ライ麦、雑穀、蕎麦、トウモロコシに多く含まれている。
一番簡単にマグネシウムを多く食べられるのは十割蕎麦八割蕎麦でもいい。ポップコーン、焼きトウモロコシにも、マグネシウムが多く含まれている。
白米を食べないのは難しいので、白米に玄米を3割混ぜ、水を少し多めに入れて、白米と同じに炊いて食べる。これで主食からマグネシウムを多くとることができる。

マグネシウムを最も多く含む食品はアオサ、素干し5gで1食分の推奨量を超える。他の海藻類、飛び魚の焼き干し、大豆、豆腐、油揚げ、納豆にも多く含まれている。カボチャも多いが、パック入りの加工品はマグネシウムが抜けている。
頼りになるのは、冷凍も水煮もしないゴマとナッツ類。食事にはゴマを多く使い、間食にアーモンドやクルミなどのナッツ類を食べてマグネシウムをしっかり摂取していただきたい。

③鉄が不足すると

女性は鉄不足になりがち

鉄は、赤血球のヘモグロビンの成分だから、女性は月経によって鉄不足が起こりやすい。
不足すると、体中に酸素がいき渡らなくなり、息切れ、動悸、貧血、立ちくらみ、めまい、頭痛、むくみなどが起こる。筋肉の疲れが早く出て、運動能力が下がり、筋力の低下、疲労、肩こり、腰痛、背中痛などが発生しやすくなる。

鉄も、数百の酵素に入って、酵素を「金属酵素」に変身させ、神経伝達物質やホルモンなどの生産を自由自在に行えるように生産効率を高めている。だから、不足すると、集中力の低下、食欲不振、耳鳴り、目の異常、口角の炎症、舌が荒れる、吐き気、爪の変化、抜け毛、さらには慢性腎疾患になる人もいる。

子どもが不足すると、脳や神経の成長が妨げられて、一生、悪影響を受ける。
「食品と暮らしの安全基金」では、日本が世界との産業競争に負けるようになっている一因が、鉄不足で、記憶力や学習能力が下がり、意欲も低下しているからで、鉄を十分にとることが、日本再生のカギになると提言している。

レバー、海藻、豆類、煮干し、干し海老で

鉄は食品の味を悪くし、色を黒っぽくするので、食品の販売業者や製造業者に嫌われている。水に溶けた鉄は、除鉄フィルターを通すと簡単に取れるので、食品や果汁から徹底的に取り除かれるようになっている。だから、野菜ジュースなどの飲料や、ケチャップなどの液体食品を含めると、鉄不足はマグネシウム不足と同じくらい深刻になっている。
国は、食品や飲料の精製度が高くなったことを無視して栄養計算し、鉄はほぼ足りているとし、不足への対策を取っていない。それで、不調な人や病人が増える一方になっている。

鉄を多く含む食品は、レバー、海藻、豆類、煮干し、干しエビなど。
吸収されやすいヘム鉄は、レバー、魚介類などに多く含まれ、吸収されにくい非ヘム鉄は海藻類などに多く含まれている。
鉄が体内に少ない場合は、鉄の吸収率が高くなり、多い場合は低くなる。だから、ヘム鉄や非ヘム鉄のことは気にせず、海藻や豆、小魚を丸ごと食べて、鉄を多く摂取するのがいい。
サプリメントや医薬品の鉄剤で摂取すると、鉄の過剰摂取による腹痛や便秘などの副作用が出ることがある。だから、レバニラなどの食品から摂取するほうが賢明である。

④亜鉛が不足すると

子どもの3割あまりが味覚障害

亜鉛が不足すると、味覚障害を起こすことが知られている。
2012年に埼玉県内の小中学生349人を対象に味覚を調査すると、「酸味」「塩味」「甘未」「苦味」のいずれかを認識できなかった子は31%と、2014年にNHKが報道した。
調査した東京医科歯科大学の上野正之准教授(現教授)は、「味の濃い加工食品」をよく食べ、「人工甘味料を使った飲み物」をよく飲むのが原因としていたので、「食品と暮らしの安全基金」が埼玉県内で買った全国流通食品の亜鉛の実測資料を複数の関係者に送ったが、反応はなかったとのこと。

国が食事を調査し、食品成分表を用いて計算したミネラル摂取量より、2005年度に行われた「食品添加物の1日摂取量調査」の実測値が、はるかに少なかったのが亜鉛である。
子どもが好きな食事の上位に、当時、カレー、チャーハン、シューマイ、ハンバーグ、鶏の揚げ物、おにぎり、パンが入っていたから、計算値の摂取量より、実際の摂取量が少なかったのは明らかである。

カキの亜鉛が半分になっていた

亜鉛が不足すると、男性は勃起障害(ED)や精子障害が起き、女性は卵巣機能が低下したり、コラーゲンを生成できなくて肌のハリがなくなったり、ケラチンが減って髪のハリやツヤがなくなる。
亜鉛も体内の300ぐらいの酵素に関与して、体や心が元気でスムーズに働くようにしている。だから、皮膚炎、口内炎、脱毛の原因が亜鉛不足のこともある。

亜鉛を圧倒的に多く含む食品は貝類のカキ。ところが、2022年に行った安全基金の調査では、亜鉛は半分に減っていた。水にさらす時間が長すぎるのが原因と考えられる。半分になっても1位であることに変わりはないが、栄養の本に出ている量の2倍食べる必要がある。

次に多いのが、レバー、煮干し・飛魚の焼き干しなどの小魚加工品、ウナギのかば焼きや、イワシやサバの缶詰で、その次が非精製の穀物や豆類、ナッツ類、牛乳、乳製品である。玄米を白米に3割混ぜて炊き、ご飯に海苔などの海藻やゴマをかけて、主食での摂取量を増やし、それに、豆腐や納豆をつければ亜鉛の必要量を満たすハードルが低くなる。
おやつには、小豆の餡が入った菓子や、カカオ72%以上のチョコレート、ココアミルクを選ぶとよい。

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